窯だより バックナンバー 2008年 5〜8月


 

 

このところ ゲリラ豪雨と落雷で 各地に被害、 ここ 秦野も例外ではない。

毎朝 PCモデムとFAXの コンセントを抜いてから 仕事場にいくのが 日課になってしまっている。

そして そんなとき、 仕事場の横の道は 川になる。

 

8月30日(土) 神奈川県西部地方の天気、予想・一日雨。 降水確率 午前70%、午後70%、夜70%

 

朝、 起きて カーテンを開けた。 雨。   やっぱり ダメかぁ。  きょうの 取材、 やりにくいだろうな。

 

陶芸誌 「炎芸術」の 作陶実践講座 ”酒器・ビールジョッキ を作る”

8頁を使い 陶土調合の泥踏みから 菊練り、ロクロ引き、ケズリ、把手付けと装飾、文様彫り、釉掛けに吹き付け。

全工程を 一日で 撮影するのが きょうの予定。   と なると、

うちの ロクロは 窓に向いているから 工程の半分は 撮影が 外から。

ライターの人は いいが、カメラは たいへんなのだ。

 

スタートは 9:00 の約束、 8時まえに 仕事場に上がる。 準備を始めると 雨は、ちょっと小降りになった。

そして ライター と カメラマン 到着、  雨が あがった。

 

「とにかく 急ぎましょう」  すぐ 作業に入ると、 日が差している?  でも 予報が 予報、 スパート!   で、12時。

 

「ここらで 昼食に しますか」  と 雨が降りだした。  やっぱ来ましたねぇ、 ゆっくり 食べましょう。

 

「あ、もう 1時だ。 さあ 後半がんばりましょう」 と 皆で テーブルから 離れると、 雨が あがった。

じゃあ、と 外で 作品を 撮ったり、釉掛け、吹き付け。  オ、お日様が 出てきましたね、

あと ポートレートで おしまいですね、 「そとで撮りましょう、木漏れ日が きれいだし」

 

好天?のうち 3:00 終了。     「おつかれさまでしたー」 ビールで乾杯。

しばらく 雑談を楽しんでいると、 遠くの空が ゴロゴロ 鳴り出す。

「こりゃ 来るかな、では そろそろ おいとまを」  と、帰っていかれた。

すると・・・、 空は にわかに 掻き曇り、 ザザー っと 雨。 ゴロゴロ  ピカッ!ドドーン!!・・・

 

そう、 あの二人、 私たちは 晴れ女 と 晴れ男 と 言っていた。

2008.8.31

(この「炎芸術・No96」は 11月発行、そのおり 又 お知らせします)


なんとなく 読む本に 「秋は ひぐらしの声に満てり」 の 一文。

このまえ お話しした丹沢のヒグラシは 今も 相変わらずで、

本を 読みながら聞くと ちょうど音響効果のようで、笑ってしまった。

そういえば 鴨長明が 出家して結んだ 方丈の草庵の環境は 僕の仕事場に ちょっと似てるし、

記の後半、庵のくだりは 50歳で出家してから58歳に執筆する間の事柄だから 年齢的にもちかい。

しかし、隠遁してなお 俗世への執念が読み取れ、長明の苦渋の こころが伝わり 切なくもある。

ま、出家する気など 毛頭ない僕が 言うことでもないが。

ところで、方丈記は その前半に書かれている 平安末の 都の惨状が 凄まじいのだ。

大火、竜巻、ひでり、洪水、大地震、飢饉、盗賊、

次々と襲う 8年に及ぶ、京の荒廃ぶりが じつにリアルに 描写されている。 とにかく 凄い。

方丈記は、古典であるのに 現代文に かなりちかく 読みやすいのがうれしいし、

文庫で 30ページたらずなので ヒマなときに ぜひ。

高校時代の 古典の先生の 顔でも 思い出しながらね。

2008.8.16


暑中お見舞い申し上げます。

あついですねー。  こたえますねー。

うちは エアコン無しの、ナチュラル生活ですから、 

現実的 大気温からは  逃れようが ありません。

 と なると、 体感温度の 感覚的下降が たより です。

そこに 一役かってくれるのが、ヒグラシ。 蝉の大合唱。

丹沢の ヒグラシは ハンパ じゃ ないんです。

右の山が カナカナカナ と数秒間 山全体が鳴ると、次は 左の 山全体が 数秒 カナカナカナ と鳴り、

そして 右、また左 と 山の エール交換が つづくのです。

聴覚の許容を超え、頭の芯が しびれます。

そう、 一瞬 暑さを 忘れる というか、トランスしちゃう っていうか。

明け方と 夕暮れ時に と思われがちですが、じつは それだけでは ありません、

大気  空気の ちょっとした 変化、 いわゆる「気」が 変るとき、この大合唱が 始まります。

しっかし すごいですよ、 仕事場の まわりは 彼らが 地下生活に 別れをつげた、

径1cmの脱出口が 無数に拡がり、低木の葉のウラには ぬけがら が ところ狭し。

朝なんて 外を歩くと、しゃば に出たてのセミたちが びっくらこいて 一斉に 飛び立ち、

体や顔に バシバシ当たって くるんです。 ホント。

でも、 やっぱ 暑いなァ!

2008.7.28


                              梅雨の鎌倉に ありがとうございました。

                              むし暑さの中を 時折り吹く風には 潮の香り、

                              夏は きっと もうすぐです。

                              このたびは カマクラコーゲイでの「中島克童展」を

                              ご高覧いただき、心より厚く御礼申し上げます。

                              お蔭様で盛会のうちに終了致すことができました。

                              今後とも、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

                                       2008年7月11日   克童 拝


 

カマクラコーゲイ 中島 克童 展 (7/4〜10)  直前情報!!

DM が届いた方たちから、「写真のうつわは 何て名まえ? 大っきいの?」 と いく度か聞かれました。

いやー、そうでした、名称と寸法を 入れ忘れました。 すみません。

灰釉葉文鉢(はいゆうようもんばち)、 径25cm/高11cm です。

葉文のほか 連葉文(れんようもん)とも 呼んでいますが、

今年の春くらいから手がけている仕事で、底には おなじみの環礁文様が入ってます。きれいです。

明日 7月2日の朝日新聞、4日の読売新聞の 朝刊 神奈川県版に 写真入りで紹介して下さるそうです。

今回の個展の 灰釉の器々は この葉文オンリーの構成、

それに 青磁、米色青磁 を合わせ、カマクラコーゲイの あの重厚な 土蔵の会場に 展覧いたします。

ぜひ、ぜひ、ご来場くださいね。

2008.7.1


あと もうすぐ、7月4日から 鎌倉での 個展です。

”予定のページ” で お知らせしているように、今回は一週間の会期ですが

会期中 毎日在廊いたしますので ぜひ 古都散策ながら遊びに いらしてください。

沖縄は もう梅雨が明けたようですが、そのころの 鎌倉は どうでしょうか。 

花は、八幡宮 源氏池の蓮、光則寺の半夏生、・ ・ ・ 

そろそろ ちょっと ムシ暑い日もあって、そう ビールが おいしい季節。

ジョッキ、つくりました。 並べます、おたのしみに。

ビ〜ル、 ビ〜ル、 ビ〜ル、

あ、 そういえば、 漢字では麦酒だけど 中国語では ○酒 (ビーヂュウ)

○のとこ、なんど入力しても でません。 口へん に 卑 という字です。

いやしい口のお酒? なんで?

2008.6.19. 


                   福井・鯖江の塗師、山本隆博さんの個展 ”ぬりものうつわ展” が 日本橋三越本店・美術サロンで 9日まで開かれています。

                  そして じつは、山本さんの得意とする 布目溜塗の茶箱には 僕の灰釉湯呑が入って展示されているのです。

                  たっぷりとした姿、落ちついた色、箱の中には 朱色の小皿と潤み色の椿皿、黄色味の灰釉湯呑。 じつに美しいんです。

                  つまり 協力出品させていただいているのですが、 これには ちょっと なつかしい思い出があるのです。

                   山本さんとは もう10年ちかく前、婦人雑誌「ミセス」の ”忙中閑あり・師走のお茶”(99年12月号)という企画で

                  ご一緒してからの おつきあいになります。 茶箱と克童湯呑を 使っての 工芸に携わる6人の茶会でした。

                  湘南・大磯の、 とある お方の邸宅で 撮影取材は おこなわれました。

                  12月号で 師走の設定ですから、当然 みんなの格好は 真冬。 でも 取材は 9月に入ったばかり、まだまだ 真夏でした。

                  エアコンを ガンガンに効かせ、タンスから引っぱり出してきた セーターの中を伝う汗を 涼しい顔で がんばって、 無事 終了。

                   そうして 忘れかけていた 冬、 出版社から 本は 送られてきたのです。

                  見て 唖然 ・ ・、 冬物の 服のうえには、海で遊んだ 真っ黒に日焼けした 顔が 乗っかっていたのでした。

2008.6.3


                このころに なると 山の鳥たちも すっかり入れ替わり、 夏鳥の姿を求めて バードウォッチャーたちが多い。

                  登山道を 僕の仕事場まで来ると ちょっと辺りが開けるから、 首に下げた双眼鏡に手をやり 耳を そばだてる。

                  「あっ ホトトギスだ、見えた?」 「今のは センダイムシクイだよなぁ」 「おっ カッコウだ、でも ちょっと遠いね」

                  そんな 会話が 聞こえてくる。  だが 時に 「ホーホケ ポポポ グィー」 とか、 「ホイホイ イッパイ ヒョロリー」 と くると ・・・、

                  ??? な、なに? どこ? なんだぁ???  と なる。

                  僕は 仕事場の中で グっ と 笑いを こらえるのだ。

                  じつは 「ガビチョウ」。 中国 原産の 飼養鳥で、 どこからか逃げて 野生化し10年くらい前から 秦野に生息している。

                  が、あまり 知られていない。  とにかく 声が大きく やたら ほかの鳥のマネをする、それも ゴチャまぜに。

                  だから、 山から 下りて バス停で バスを待つ バードウォッチャーたちの首は、かたむきっぱなし と なるわけだが、

                  あれは 双眼鏡が 重いからでは なかったのです。  ふ、ふ、ふ。

2008.5.16.


                         伊豆高原にある美術館 ”アフリカン アートギャラリー” を 訪ねた。

              このまえ町田で見た「世界の土器」展に、なぜかアフリカが入ってなくて、 物足りなさを 引きずっていたのも 足を向けた理由のひとつ なのだが、

              やっぱり 晴れるはずだった天気予報が大きくはずれ、海で遊ぶ予定が おじゃんに なってしまったのが 本当のところだ。

 

              茫々と降る雨の中、観光案内所でもらった地図を たどり、 着いた そこは 樹林に靄ってたたずむ ちょっと変った建物だった。

              アフリカの木彫を かたどった取手を ひき、重く大きな扉を開けると、奥 から館主が 迎えた。

              G.W の 合い間の平日、そして この雨、 ほかに来館者は いなかった。

              迷路っぽい構成で 展示された 木彫、仮面、土器は、怖いような迫力で 僕にせまる。

              なにかを 訴えるような  こいつ は いったい ?

              けっして 古いものだけでは ないのに、一様に原始が感じられるのは なぜだろう。

 

              見終わったあと 館主の いれてくれた 熱いコーヒーをいただきながら、 いろいろと お話しを 伺った。

              そのなかに、 こんなことが。

              アフリカには とても たくさんの部族が、 独自の 文化・生活形態を持ち 暮らしてきた。

              だが しかし、皆 ついぞ ”文字”と いうものを持たなかった。 つまり、アフリカには文字が無い。

              そして 話し言葉 以外で 伝え 残す 事柄は、 形 となり 模様となり 踊りになった。

              それぞれに 意味 メッセージを 持って。

 

              モディリアニ や ピカソ、ブラックたちを 驚かせ、影響を与えた アフリカンアート。

              世界中の ほとんどで 失ってしまったものを、ずっと 持ち続けてきた アフリカ芸術。

              ”原始の秘密”を チラっと 感じた 一瞬だった。

                                                2008.5.2.    


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