窯だより バックナンバー 2021年 9~12月



   

令和3年もあと2日、齢を重ねるごとに1年が過ぎる速さは増すばかりで、

まさに「光陰矢の如し」をリアルに感じるのであります。

今年は前年に作陶の主要原料である長石と陶土が不意に大変化、

その調整に時を費やした1年でした。

やっとのこと押し詰まった年末のテスト焼成で良い結果が掴め、

来年は一歩踏み出せそうな、そんな明るい気持ちで

年を越すことができるようでホっとしてるところです。

さて、しょっちゅう壁にぶつかる僕の乗り越え方は

山を散歩しながらアイデアを練ること。

その散歩コースが工事のため現在、3月中旬まで一部通行止めに。

丹沢登山がお好きな人たちにも馴染みのルートと思います、

なので上下の写真にてお知らせしておきますね。

さてさて、皆さま今年も大変お世話になりました。

どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。

  

2021.12.30



  

東洋陶磁学会の「第48回大会」がオンラインで開催され参加した。

年に何回か散発的に半日ほどで行われる研究会に対し、

大会は毎年この時期に3日間日程で開かれる陶磁史研究発表の一大イベントである。

しかし昨年は新型コロナ流行で中止、

東洋陶磁研究の現在は如何なる状況であるか、情報は滞っていた。

そのような中、今回のテーマはズバリ

「陶磁史研究の今とこれから-2020年からの展望」。

陶磁器をめぐる研究や教育、創作の世界、それぞれの現状と展望を語り、

問題意識を共有する場となった。

まぁ、そんな今年の大会であったが、やはり気になるのは

コロナ下2年の間にその当時注目を集めた、あの古窯跡調査研究の今だ。

しかし、さすが東洋陶磁学会さま、痒い所に手が届きます。

発表は中国から2名、景徳鎮と越州窯上林湖窯跡、

韓国から2名、広州官窯と康津高麗青磁窯。

国内も2名で九州伊万里の登り窯跡保存プロジェクト発表と、

PC画面に膝を乗り出すオンライン大会でした。

あ~、幸せ~~。

 

2021.12.17



   

世田谷上野毛にある「五島美術館」へ現在移転休館中の

町田市立博物館所蔵名品展『アジアのうつわわーるど』を観に行った。

町博コレクションの質の高さに改めて感じ入る内容であったが、

今日はそれとは別に久しぶりに訪れた五島美術館で

館設立に関する面白い話を知ったので、それをお伝えすることに。

東急電鉄の創始者、五島慶太が半生をかけて収集した

日本・東洋の古美術品を蔵して昭和35年(1960)に建てられた「五島美術館」、

その代表所蔵品は何と言っても国宝「源氏物語絵巻」であろう。

何しろこの絵巻を展示するに相応しい美術館をと、

近代数寄屋建築の祖とされる芸術院会員の吉田五十八に無理を言って、

源氏世界の寝殿造り意匠を採り入れて設計してもらったほどなのだ。

さて、その所蔵を熱望してやまなかった絵巻は

どのようにして五島慶太の元に来たのか?

それは開館数年前のこと。

元々は数寄者・益田鈍翁の旧蔵だった絵巻は実業家・高梨任三郎の手にあった。

高梨は当時アメリカで流行していた飲料コカ・コーラの日本での権利を取得したばかり。

ところが販売に至る資金がどうしても足りないのだ。

莫大すぎる生産工場建設費、流通システムをどう準備するか、

考えぬいて思い当たったのが五島慶太であった。

あの人ならきっと、そして源氏物語絵巻譲渡を提案、

双方の夢をかなえる大団円を迎える。

1957年に日本でのコカ・コーラ製造販売が開始され、

1960年に東急は五島美術館を開館したのだった。

あの時、もし五島慶太が絵巻を買わなかったら、

日本人がコカ・コーラを口にするのは、ずっと後になっただろう。

と、今も学芸員さんたちは話し、笑うそうなのである。

 

2021.12.1



     

少し前のことですが、かなりマニアックな展覧会に行ってきました。

新橋の東京美術俱楽部で開催された「東美特別展」、

1964年から続く古美術界最高峰の展示会です。

この東美特別展を経て東京国立博物館に収蔵されたのちに

国宝となったものも数多くあるほどです。

今年は会場内に東博所蔵10点の名品による「美のまなざし展」も同時開催。

さて、この展覧会、他とはちょっと違う展示方法がされています。

ガラス越しでないのです、そして材質にもよりますが、

一言声をかければ手に取ることも可能、重要美術品指定のものまでです。

まさに眼福の極み、十分に堪能してまいりました。

今年は陶磁器は言うまでもなく、書に逸品が揃って驚くばかりの内容。

西行、紀貫之、藤原公任、良寛 などなどズラリ。

僕の好きな公任に至っては石山切伊勢集断簡、

重要美術品で数寄者・益田鈍翁の旧蔵です。

・・・う、・・・欲しい、・・・如何ほどでお譲りを・・・?

「はいっ、2千万でございます」

「あははぁ、今回は遠慮しときますぅ・・・」

この東美特別展は購入可能なのであります。

 

2021.11.15



 

窯だより休止中の出来事から遡ってお知らせしましょう。

まず10月初旬、もう終了しましたが根津美術館の

「はじめての古美術鑑賞・人をえがく」展へ行ってきました。

ただしお目当てはこれでなく、”展示室5”で同時開催していた

「陶片から学ぶ・朝鮮陶磁編」です。

朝鮮工芸研究の礎を築いた、あの浅川伯教が昭和初期に

現地で採集した陶片の数々、きっと珍しいのが有るはずと。

ふふふ、やっぱし有りました、

内底に「内贍」銘の印花がある三島茶碗です。

読みは日本語で「ないせん」、韓国語で「ネソム」、

宮殿の食事、宴会を担当した部署です。

なぜ銘が入っているかと言うと、

15世紀前半の朝鮮王朝では使用する器を

各地方の窯業産地から貢納させていたのですが、

地方官僚による横流しが常行化していました。

困り果てた王・太宗は太宗17年(1417)に貢納品の搾取を防ぐため、

器に納品先の官庁名を刻むよう王命を下したということです。

韓流時代劇ドラマで見る、あの光景が目に浮かびますよね。

下の白黒写真がそれですが、展示品は撮影不可でしたので、

かつてソウル東大門・平和市場の古書店街で入手した

「韓國陶磁史」(姜 敬淑)から拝借しました。

なお、展示キャプションによると焼成産地は

全羅南道 光州郡 金谷里とのこと、

ずいぶん遠くから運んでいたんですね。

 

2021.11.1



 

しばらくお休み頂いておりましたが、PCを新調して「窯だより」再開の運びと相成りました。

思えば前PCはWindows8搭載で購入し途中Windows10にアップグレードして8年半使用、

ノートタイプの寿命は4、5年ていうから持った方なのかもしれませんね。

夏まえから使用中にいきなりシャットダウンすることが多くなり、

小まめに保存しながら騙しだまし編集してきましたが、

あの時はアップロード中に落ちて1~8月分を消失してしまったわけです。

アレコレやってみたものの結局改善ならず買い換えを決意。

が、そんな矢先に新Windows11が10月リリースのニュース、じゃぁ少し待つかと今まで。

早く欲しいのを我慢してたのに、なんだぁ、ソフトだけ?

各メーカー共アップグレード対応Win10機での秋モデル発売でした。

ま、慣れ親しんだOSでの再出発です。

そんなことでして今後ともお付き合いの程どうぞよろしくお願い申し上げます。



2021.10.20



お知らせ

「窯だより」はPC故障のため編集できなくなりました。

つきましては、当分の間お休みいたします。

2021.9.15



   

自由権と民主運動が抑圧される、苦々しい報道ばかりの香港から、

ちょっとばかり心安らぐニュースが舞い込んだ。

香港の鉄道MTR屯馬線が全線開通したのだが、

それに伴う新たな開業駅「宋皇臺」を建設中にその名のとおり

宋時代の陶磁器などが400点余り大量に出土したというのだ。

そもそも宋皇臺は南宋時代末1276年に元軍が都である臨安、

現在の浙江省杭州市へ侵攻、皇帝は捕らえられ南宋は事実上滅亡した。

しかし、皇族の一部と重臣らが「端宗」と「衛王」二人の皇子を連れて脱出、

この地まで落ち延び、元に対する抵抗運動を展開したことに因む地名だったのである。

さて、冒頭で心安らぐニュースと言ったのは、その発掘された遺物の行き先のことだ。

普通ならば博物館や資料館に収められる文化財を、

いや、中国政府没収もあり得る物を、なんと駅構内に巨大な展示ケースを作り、

貴重な考古学資料を鑑賞して貰おうという、太っ腹で粋な計らいなのである。

地元香港の人たちも足下から800年の眠りより覚めて現れた品々を、

一目観ようと集まり、行列を作っているという報道だった。

   

2021.9.1



PCの不具合のため、2021年1月~8月の「窯だより」を消失してしまいました。



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