窯だより バックナンバー 2022年 5~8月



   

先日、中国・新華社通信から窯跡発見発掘のニュースが入った。

後漢(25~220年)時代、中~後期の青磁窯だ。

場所は湖南省醴陵市、この近辺では唐(618~907年)時代に栄えた

「長沙窯」が有名だが、唐代までの焼造は不明だった。

そもそも後漢の青磁とは、それまでの灰釉陶から

青磁と称するにふさわしい陶磁器へと進化した段階であり、

そのような初期青磁を焼いた窯は、今回発見の窯跡から千キロも離れた

上海近くの浙江省東部で見出されているだけだった。

青磁の歴史の空白を埋めるこの度の報道は、

かなりセンセーショナルな、事件とも言えるニュースなのである。

 

2022.8.13



 

先月上旬、10年パスポートが年末で切れることに気付き、切替申請をした。

その時点ではコロナ第7波の爆発的な感染拡大は無かったのである。

海外からの旅行客も徐々に増えてきていて

この分なら渡航できる日もいよいよかな?

となると、入国時必要残余有効期限が問題と、改めて確認したのだった。

この地域の旅券事務所は厚木の「県央支所」、

バス電車を使えば1時間以上かかるけど、

クルマだと新東名・丹沢秦野から乗って30分以下の近さ。

そのうえ10年前と違ってインターネットによる申請入力が出来、

作成されたPDFファイルをプリントアウトして行けば、あと必要なのは証明写真だけ。

こりゃあ便利と、勇んで出掛けたわけである。

そして、パスポートセンター横の証明写真撮影店でパチリ。

これで申請必要書類は全てOK、あとは現像を待つだけ。

さて、渡された顔写真に愕然、10年の歳月とはこういうものなのか!

オッサンからジイサンに変貌を遂げていたのであった。

 

2022.8.1



   

「梅雨に逆戻り」ではなく、梅雨は明けてないのです。

確かに6月末に各地で猛暑日が続き、

記録的な早さで「梅雨明け」が発表されたわけでしたが、

じつは自然界の法則性必要条件が、まだ整っていなかったと言えます。

近所の酪農家から教えてもらいました、鍵となる生物は「アブ」です。

都会の人には無縁かも知れませんが、あのハエが巨大化した形態で、

蜂のように毒針は持ちませんが、動物から吸血する忌まわしい昆虫。

梅雨末期になると、アブが飛び始める。

アブが出現して、雨の日が徐々に減少、そして晴の日が増える。

その流れこそが梅雨明けなのだそうで、今まで的中率100%でした。

つまり、まだ、アブが飛んでないのです。

 

2022.7.16




   

おとなり伊勢原市が毎年6月に中央公民館・展示ホールで開催する

『 いせはら市展 』が8日(水)にスタートし、26日(日)に無事終了した。

「絵画・版画・彫刻」を前期、「書」「写真」「陶・工芸」を

後期に分けての、一大文化芸術展である。

「陶・工芸」部門の審査を担当していて、以前にもここで紹介しているが、

やはり2年半のコロナ禍には大きな影響を受けた。

一昨年は作品募集を開始しながら完全中止、

昨年は表彰式と作品講評を取り止め開催したが出品は半減した。

さて、本年度27回展、開催方式が去年同様とのことで、

一抹の不安を抱いていたのが本音だった。

しかしである、蓋を開けてみると思わぬ転回が。

審査日、会場に入って、出品作品数の多さに先ずはホッとしてから一周り。

すると、驚いたことに、とんでもない高レベルの作品が散見されたのだ。

授賞選考に力が入ったのは言うまでもない。

賞決定のあと実行委員に出品者名を問うと、やはり名のある作家たち。

こういう方々に応募いただけたのは、

発表の場が少なくなっているコロナ禍だからかも。

『 いせはら市展 』のレベル向上に力を貸して下さったこと、

たいへん嬉しい思わぬ誤算だったのである。

   

2022.7.1





前回お伝えした登り窯の窯焚きも先日無事窯出し、

内そと掃除をしてもらってサッパリしたのか、

窯は今ゆったり身体を休めている風に見える。

まえにお話しした一昨年の陶土と釉長石のトラブル。

土探しから始まり、釉薬の調整、電気窯とガス窯でのテストの繰り返し、

そしてやっと辿り着いた登り窯焼成だった。

でも、薪窯の炎は他の熱源とはまったく違う次元。

生きた火炎の嵐に包まれ曝されてこそ産まれる窯変の美しさ、

焚き手と窯が力を合わせて臨む灼熱の熱狂世界。

窯出しした作品たちは輝いていた、これで次へ進めそうだ。

それにしても、一つの青磁釉で色んな色がでるもんだなぁ。

窯よ、よく頑張ったね、次の窯焚きまで、まずはゆったり。

ご苦労様でした。

 

2022.6.16



  

コロナ禍で延期に次ぐ延期となっていた登り窯にやっと火が入った。

本当に久しぶりだ。

松薪の燃えるパチパチという音、焚口からモクモクと溢れる煙の匂い。

この日をどれだけ待ったことか。

喜びを噛み締めマキを投げ続ける。

やがて音はゴウゴウと唸り始める、

火を注視する眼は此の世に存在するはずがない色を認識する。

時は止まっているのか、浮遊する思考回路。

いいぞ、そうだ、この感じ、窯焚きなのだ、

火祭りなんだ、今。

近代陶芸の名匠、富本憲吉は「製陶余禄」に、こう書き残している。

 「 前にも火 うしろにも火、右も左も皆火、

火を把って 火を防ぐ

炎々たる 火の夢 陶工の夢 」

 

2022.6.1



   

ゴールデンウィークは基本的に外出しない方針の我が家。

だが、今年はGW最終日で会期終了となる展覧会招待券を頂いていて、

ならばカレンダー上では平日の5月6日にと、熱海MOA美術館へ出掛けた。

開館して40年になるMOAには何度も訪れているが、

2016‐17年にかけ現代美術家の杉本博司氏が手掛けた

展示スペースの大改修工事以後は、これという展覧会が無かったこともあって、

リニューアルオープンしたMOAが気になりながら

訪館できずにいたので、良い機会だった。

開館40周年記念特別展「大蒔絵展・漆と金の千年物語」は、

国宝26点、重文52点がゾロリと並び、

展示ケースガラスの光反射を無くす黒漆喰の壁を

鑑賞者の背後に設けるなど、なかなか工夫されていて、

とても快適な展示空間を楽しめた。

さて、じつはお話ししたかったのはこの先である。

特別展会場を退出したあと閉館時間まで少しあったので、

併設された庭園でもブラブラ歩こうかと外に出た。

すると「光琳屋敷」なる立札、え?こんなのあった?

今までなんで気付かなかったのだろう。

MOA美術館コレクション第一の名品、尾形光琳・国宝「紅白梅図屏風」。

それを描いたと考えられる晩年を過ごした屋敷を、

京都国立博物館に保存される光琳自筆の図面と

大工の仕様帖に基づき復元したものだという。

ふ~ん、そうなんだ、

入り組んだ構造の建屋内は、ちょっと迷路のようで、

歩くうちに、ふと京都に居るかの錯覚に捕らわれる、

あぁ、なんという心地よさだろう、

コロナで足が遠のいている古都の空気が流れていたのである。

   

2022.5.19



   

3年ぶりに室内楽の美しい調べに浸る春の夕べだった。

もう20年以上のお付合いとなるピアニストと

ヴァイオリン、チェロのよる演奏会「プリマヴェーラ コンサート」。

コロナ禍で忘れかけていた、あの感覚、

奏者から直に届く音の波動に包まれ陶酔する、

幸せな時間が戻ってきたのである。

毎春の楽しみプリマヴェーラ コンサートは

いつも横浜の「みなとみらい小ホール」で行われているが、

今年はホール改装工事中により戸塚の「さくらプラザホール」で開催。

これは僕にとってラッキーなこと、

コロナで公共交通機関に抵抗を感じる田舎者には、

電車よりクルマの方がアクセスが良い戸塚開催はプレミアム。

ちょうど最近開通した高速道路「新東名」の

秦野丹沢スマートICへは たったの5分、

そこから乗って圏央道、新湘南バイパスと繋いで

なんと50分という近さであった。

 

2022.5.1




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