窯だより バックナンバー 2005年 4〜8月


小っちゃな窯を 手に入れた。

CARデザイナーの友人が、1年前に 買って 組み立てもせず 放ってあったものだ。

「アレ、どうした?」 と 聞いたら、もう 要らない、って言うので 徳利と交換した。

炉内寸法は、径30センチ・高さ35センチ と ミニだが、還元焼成もできる。

素焼が 2時間半、本焼酸化が 4時間、還元が4時間半 という便利さ。

きょう、ひとりで 組み立てて 半日ほど。

この ガス窯、4万円だったと いうから ウソのように 安い。ネットで見たら ホントに あった。

キット だけど 築窯から体験できるし、こいつは 遊べまっせ。

2005.8.20

 


残暑 お見舞い 申し上げます。

私は 秋の個展に 向け、制作も佳境に 。 と、云いたいところですが、悪戦苦闘中。

山の中の工房とはいえ、日中は しっかし 暑い。 とにかく 上半身 裸で 頑張る わけです。

制作を 客観的に 見るために、ロクロの前に置かれた 鏡に うつる姿は、

書の 井上有一 か、はたまた 奄美の 田中一村 か。

 格好は 勇ましいのですが、作品が 付いてこない。

お盆が 来ると、 なんとなく 追われるような 気分になり、

ツクツクボウウシ が 鳴きだすと、アセル いや〜な 感じ は、

小学生の時 から ちっとも 変わりません。

2005.8.11

          


僕の生まれた 1954年、作品”ザムザ氏の散歩”は うまれました。

陶芸の世界に、オブジェ という造形分野を 切り拓いた作家、「八木一夫 展」 が 開催中です。

京都で スタートして 広島、茨城と まわり、やっと東京に きたわけですが、

東京都庭園美術館 という都合上、作品数が 減ることは 知っていました。

しかし、旧朝香宮邸 での展示は 思いのほか良く、そのことを 忘れさせただけでなく、

一般的な 美術館での クールな展示では、知ることのできない 八木一夫作品が そこには ありました。

(8月21日まで、サイト で 割引券を プリントアウトできます。なんとポストカードの おまけつき

でも、やっぱり ヘビーな 八木一夫、館から出るや その日の強烈な暑さと あいまって、

頭クラクラ 身体フラフラ。 3連休前日で 混雑する、箱根方面の小田急線は 絶望的。

渋谷の 松濤美術館 に回って「會田雄亮 展」(18日終了)。さすが 環境造形の陶芸作家、見るものを快適に。

拝見後、アイスコーヒーを飲みながら、学芸員の お二人と のんびり雑談、

ちゃっかり 涼んでから 帰路につきました。

おじゃまさまでした。 仕事中 ごめんね。

2005.7.17

 


来年から 近くの 市 の美術展、所謂 「市展」 の 陶芸部門で 、審査を 担当することに なりました。

とても その柄でないと お断りしていたのに 結局 押し切られました。

審査は 2名で 行い、公正を期すため 1名を 市外から招来するそうです。

前任者が 10年に渡り、この市展の レベルを高めることに 貢献した

著名な 陶芸作家 だけに、ちょっと 僕には 荷が 重いのです。

もう ひと方が 留任で、 5年も 続けて おられるので 安心なのですが、

一応 様子は 知っておかねば と、先日 今年の審査を 見学してきました。

入 落 の検討 から始まり、市長賞、教育委員会賞 など 10の賞が あり、

自分なら これあたりか と思っていた作品が、やはり 受賞したのには 少し気を楽に しました。

しかし、会場を 見てまわるうち、自分の中に ある問いが 芽生えたのです。

それは、場は違えど 僕も 審査を受けるべく 制作・出品 することが 多々あるからです。

「自分の中で ”つくる” と云うことと ”公募展への出品” は どんな関係に あるのだろう。」

それは どんどん 脹らみ、「つくるとは」、「つくるとは」、

僕は 呪文のように 唱えながら 会場を 歩きまわることに なったのです。

2005.7.10

 


今日は 泥ふみ を1日やった。

土練機が ないからでもあるが、土つくり としても、

自分と 土との 距離感としても、結構 大切な仕事と思っている。

独立した頃からすると 1回に踏む量は ずいぶんと 減った。

萩の三輪休和は、晩年 天井から下げた 綱に つかまりながらも、

自ら 泥ふみを していたと云うが、 僕も そう ありたい。

近ごろ この仕事をすると 思いだすのは、だいぶ前に行った ベトナム の 窯場。

そこは 観光などには 無縁の村で、ちょっと閉鎖的では あったが、

遠くから来た 僕たち家族に とても やさしかった。

おばあちゃん から 幼児まで みんな 窯に たずさわり、

この 泥ふみ は 10才くらいの 男の子の 仕事だった。

今日、僕は 泥を 踏みながら 心は あの 村に 居た。

2005.7.1

       


今月号の「陶説」に、尾形乾山について書かれた 随筆が載っていて、

それによると、若き日の乾山が、嵯峨野の直指庵に 座禅に通っていたようなのです。

え? 直指庵? 先日 行った「東南アジア陶磁館」の となりです。

すると昔、同じ あの路を 乾山も・・・。 何を想い、歩き、そして その後 作陶生活へ入っていくのか・・・。

アー、そうと知っていたら、あの日 大覚寺から歩く 行き帰りも、又、別の感慨があったろうに。 悔まれます。

それより、情けないのが 大阪。 文学的 批評美学の珠玉 とされる、小林秀雄の「モオツアルト」、

その(2)章に、小林秀雄が 大阪の道頓堀を歩いているとき、

突然  ト短長シンフォニイが 頭の中を流れると いう 刺戟的な一節が あるのです。

僕も 道頓堀に いく機会が あったら、と、かねてより 密かに 夢みていました。

しかし、先日、せっかく そこを歩いていた 僕の頭の中は、

それから 食べる 「大たこ」 の ことで 一杯だったのです。

2005.6.15

           


6月6日を もって 「第18回 日本陶芸展」 は、大阪にて 終了致しました。

大阪展の会期中は、4日間 関西に滞在、と いってもベースは 京都に。

朝 大阪に行き、午後は 京都に戻って お寺と美術館めぐり。

京近美の「加守田章二 展」は すごかったし、東南アジア陶磁館の「クメール陶器 展」も 充実していました。

クメールの方は、3月5日に 大阪で行われた シンポジウム「国際会議・クメール陶器の新見解」の

関連展示で、極めて貴重な コレクションであることを、再確認しました。

館主の藤原さんとは 2年ぶり、ついつい 時間を忘れ 長居してしまいました。

迷惑 かけながらの、気ままな ひとり旅。 お世話いただいた 皆様、ありがとうございました。

2005.6.7

             


 きのうは 日頃 忙しくて なかなか 集まれない友人たちと、うら山で獲れた 猪鍋会を。

陶磁専門誌・元編集者の やきものジャーナリストと、博物館・学芸員 の彼女たちの話は、実に面白く 内容は時空を飛び交う。

気付けば、なんと 7時間も 鍋を囲んで飲んでいたのです。空いた瓶を見て、これまた唖然。

今日は 朝から元気に仕事してるかと思うと、おそるべし その パワー!  未来は 明るいぞ!?

2005.5.26

 


「香合の美」 展 (八王子市夢美術館)に 行きました。

これは、19世紀にフランスの元首相クレマンソーが収集した、3千点の香合。

長い間 行方不明となり、30年程前 カナダの美術館の収蔵庫で発見されました。

27年前、600点が高島屋で展示されましたが、その時 見れなかった私には、やっと会えた570点です。

森 孝一さんの ギャラリートーク も、たいへん勉強になりました。

森さんとは、久しぶりに お会いしましたが、明日は博多、あさっては唐津と 超多忙。

お身体 気をつけて下さいね。  この展覧会は5月29日まで。

2005.5.21


「第18回 日本陶芸展」 が始まりました。

初日5月12日には、桂宮殿下を お迎えしての表彰式・レセプションが あり、全国から作陶家が出席しました。

この展覧会ほど、バラエテイーに富んだ あらゆる「やきもの屋」が集う 交流の場は、

たぶん 他には ありません。2年に1度の 大宴会なのです。

2005.5.13

      


先日、町田市立博物館の 「タイ古窯調査紀行」講演会 を聴講してきました。 

日本、台湾からの研究者と、現地大学研究者が合流し、タイ北部のカロン、サンカンペン、

中部のシサッチャナライ、スコタイ の窯址を 改めて調査した報告会です。

この調査行には 私も制作面での立場から、お誘いを受けていたのですが、個展の準備やらで参加できなかったものです。

タイ古窯は 各古窯群の発掘調査、そこから出土する陶片類、沈没船の積荷、日本を含むアジア一帯に残る遺品など、

情報量が多い割に、総合的な 調査 研究がされず、制作年代などに結び付く 重大な発見がない状態が続いてます。

とはいえ、18年前に私が行ったころからすれば、主要な窯の周辺に調査は拡がり、保存も格段に進み、

又、周辺国の国情の安定に伴なう 発掘 研究からも、タイ陶磁の不明な部分に 光があたりつつあるようです。

そして 今回のように、熱意ある若き研究者たちの行動力、各国の交流 協力は、

今後を とてもたのしみに して くれています。

          

ところで、現在開催中の 「東南アジアの壷ー仮面とともにー」 (6月5日まで) には ぜひ。

矢島さんが、100% ご自分の趣味???で 立ち上げた展覧会で、ゼッタイスゴイ!

だって、壷って オス・メス があって、結婚まで しちゃうなんて、知らなかったなあ。

「人々に 受け継がれてきた 心の世界」 必見です。

2005・5・2

町田市立博物館 Tel  042・726・1531 月休み


ここ3日間、マキの移動です。次に使うのを 窯に運びやすく 風通しのよい所へ、新しいマキを空いたところに。

800束を動かすのは ちょっと きついけど、順調な窯焚きを 望むなら かなり重要な仕事です。

このマキたちも 燃されるために 育ったわけじゃないでしょうが、焼いてこそ「やきもの」。

すべては 君たちにかかっているんだ、たのむよーって 、マキのご機嫌を そこねないように運ぶのです。

2005.4.28


雨の水曜日、ツクリも滞り 「湘南江の島香水瓶美術館」 に行ってきました。

香水瓶専門の美術館で、ルネ・ラリックの代表作を網羅しており、

世界的に質の高い内容を誇っています。

手の平に乗る妖しげな美の結晶。改めて ラリックの造形力、

心憎いばかりの バランス、その繊細さに酔いしれました。

機会があれば、ぜひ 足をお運びください。

江ノ島 の散歩も、どこか 懐かしいです。

2005.4.20


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2005年 9〜12 月