窯だより バックナンバー 2008年 9〜12月


 

どうにか年内に 窯焚き ができた。

先週末 窯出しをして、いまは その かたずけに忙しい。

 うまれたばかりの やきものたちは、チンッ チリッ ピンッ チンッ ・ ・

仕事場のなかは うわぐすりに入る 貫入の 澄んだ音。

火とすごした 窯焚きの夜、火に照らされ 火を見つめる みんなの顔、

身体の 前がわは灼熱 背中は極寒の、冬の窯焚き。

つい 一週間まえのことが、 もう 懐かしい。

2008.12.30


杉林に 射しこむ 美しい 光、

その根かたに 積み上げられた、なにやら ふつりあいな コンクリートの角柱。

場所は 仕事場の前、角柱は”境界杭”という 土地の境に 頭だけ出して埋められるもの。

このあたりも いろいろと 変りそう、 毎日 測量の人の声がする。

 

さ来年、平成22年 春、ここが 全国植樹祭の会場となり

克童窯のまわりは すべて、県の「かながわ未来の森」公園 と なるのだ。

山を 市松もように伐採 整備し、3千人の招待者が 22種の苗木を植樹する 一大イベント。

両陛下は ブナ、 スダジイ などの種を お手撒きされるそうだ。

もう、1年 と ちょっとで。

 

僕の 仕事場の 存続に、県は 円満に なんの問題もなく、ぜんぜんOKだったが ・ ・、

じつは ちょっと心配。 

それは 植樹祭のあと、広大な整備された公園の ど真ん中で

悠々と 轆轤なんて回しているのを、山に来たひとは どう思うのかなぁ、

頑固オヤジ とか 変人陶工 あつかい されたら どうしよう、 ねぇ ・ ・ 。

 

2008.12.15


                        晴れの日は 窓の外が 水槽をのぞくようで

                        冷たい水に みたされているみたい

                        こっちのガラスは カメムシの影が ゆっくり歩いて

                        ヤマイモの花は かさり と枯れて ゆれた

                        気がつけば もう 侘び助が 一輪

                        窯の 冬が 始る

2008.12.2         


今、アフリカ ・ マリ の ミュージシャン 「ロキア・トラオレ rokia toraore」 に すっかり はまっている。

仕事場に 流している ローカルFM局で、 ロキアの ”チャマンチェ” を 聞いたとき、

その サウンドは、不思議にも 懐かしさを 持っていた。  デジャヴ?

ロキアの 少し かすれた唄声、包み込むように奏でる弦楽器、それは 

なんとなく 沖縄の蛇皮線にも似て、時に 突き刺すように、ときに ねっとり 絡みつくように。

そして、 永遠 を 思わせる 太鼓の リズム。

 

マリ は 西アフリカの中でも 一番 エキゾチックな国 と いわれ、

ドゴン族、バマナ族、ボゾ族 が 暮らしている。

以前 「アフリカン・アート・ギャラリー」 で 見た マリの造形は、

木像や 穀物庫の扉 その梯子などに、 

他の アフリカの地とは 異質な 親しみを 感じられたのを 思い出した。

繊細さ と共に ほのぼのとした やさしさを、そなえていたから。

そう、 あの世界と ロキアの音楽は、 シンクロしているのだ。

ロキア は どの 部族なのだろうか。

2008.11.14

一度ぜひ お聞きください。YouTube の rokia traore に リンクしています、画像をクリックすると 動画が見られます。

但し、「チャマンチェ」は 12月5日 発売なので、この中には ありません。


知の巨人と言われた 博物学者・南方熊楠(みなかた くまぐす)

和歌山 山中の孤独な暮らしで 幽体離脱や幻覚を体験、

自分の正気を疑った彼は 「脳を調べてほしい」 と 言い残し、1941年に亡くなった。

熊楠の 脳は ホルマリン漬けにされ、今も 大阪大学 医学部 の標本室にある。

こんな ちょっと こわい記事が 先日の新聞に載っていた。

写真の 脳は 淡い煉瓦色をして、ねむっているようにも なにかを考えているようでもあった。

医学は進み 1998年、元京大の精神科医が 磁気共鳴画像(MRI)で 調査、

右側頭葉の奥にある海馬に 萎縮を発見し、これが 幻覚の原因だと 結論づけた。

そして 同様の疾患があったと見られる 歴史上の人物も あげられていた、

画家 ゴッホ、ロシアのドフトエフスキー、「不思議の国のアリス」の著者 イギリスのルイス キャロル、

光を見て卒倒 キリスト教に回心した 聖パウロ、英仏の百年戦争に身を投じた ジャンヌ ダルク、・ ・ ・。

なんやら 複雑な 気持ちに なってくるでしょ、 ね。

 

           

えーっと、 ところで 2ヶ月まえに 取材もようを お知らせした 炎芸術no96.冬号が、11月1日 発行されました。

ちょっと マニアックな雑誌なので 大っきな書店じゃないと置いてないんだけど、街に出たときにでも ご覧ください。

146〜153頁 「灰釉のビールジョッキ」 です。 季刊誌なので 1月末まであると思いま〜す。

2008.11.1 


明日 11日は 十三夜だ。 ・ ・ 月、見れたらいいな。

このまえ 十五夜のことを お話ししたばっかりで なんだけど、

まん丸から ほんの少しだけ 形の歪んだ月を 愛でる感性が うれしいし、

十五夜の月を”芋名月”と いうのに対し、十三夜の月を”豆名月・栗名月”と 呼ぶのも楽しい。

日本だけの風習で、 919年 醍醐天皇の 月の宴に始ったと 分かっているいること、

そして 宇多法皇が その夜の月を 無双 と賞した というのも揮っている。

醍醐 34歳、宇多 46歳の晩。 その夜の酒は 美味かったろうな。

日本人の 月見は 十三夜の ほかにも、 

十六夜・いざよい は”いざよう”の転語で、十五夜より ちょっと遅く ためらうように出てくる様子を。

十七夜 は ”立待月”で、もうすぐだから 立ったまま待とう。

十八夜 は ”居待月”、ちょっと まだだから 座ってようね。

十九夜 が ”寝待月”、疲れるから よこになって待つかぁ。

などなど と。 当時のひとは 風情があったんだねぇ。

・ ・ ・ でも 、 ちょっと 飲みすぎじゃない?

2008.10.10.

ところで、話は ぐるっと変って。

先週、陶美アカデミーの 「韓国陶磁研修旅行」 が4日間かけて行われました。

ぼくは 仕事がたまっていて お留守番だったのですが、

その旅行の 報告が、陶美アカデミーのホームページ ”お知らせ”のページに、本日アップされました。

見てやってください。 なかなかの成果だったようです。

チッキショー 行きたかったナーッ!


「彼岸 ひがん」      まんじゅしゃげ

 

                              いけ花 と いうのは、

                              自分の心と、 花の声を聞き、

                              姿を見、 共同作業で

                              最も 新しい表現方法を

                              みつけることが 大事であって、

                              習うということは、

                              何を習うか ということを

                              自分の肝に銘じて、

                              花の心 というより

                              花と対話できる心でありたいと、

                              私は 思っております。

1999年、華道作家 中川幸夫が 織部賞を 受賞したとき、壇上で あいさつした言葉だ。

その日、僕は テレビで見ていたのだが、ある深い感銘をうけ いそいで手帳に書きとめた。

中川幸夫の仕事は なぜ いつも あのように衝撃的なのか、と思っていたから。

そして、「いけ花」を「陶」に 「花」を「土」に入れ変え、いく度も読み返した。

「花」は ”素材”、 「何を習うか」は ”問い”。

「花の心」は 答、 「花と対話できる心」とは 問いに向かう ということか・・。

答を求めるのではなく、自分の中の”問い”と向き合う・・・なのか。

先週、お彼岸で お墓参りに行ったとき あちこちと咲く 彼岸花を見て、そんなことを思い出した。

2008.9.30.


仲秋の名月は  流石 だった。

庭の萩 は満開を 少しだけ過ぎて 昼は 砂利を 赤紫色に染めていたが、

月光の下では 真綿のように 白く 淡く 光った。

すすきの穂は いま 開かんと 揺れ、 虫の音は どこまでも 澄んでいた。

団子を供え 酒を呑んだ。

空には 誂えたように 雲が たなびき、 月は 多彩に 表情を 変えてくれた。

十五夜 は太陰暦、 月の満ち欠けに 暮らしの基準を置いていた いにしえ の 祭だ。

陰暦の秋、7、8、9月の三月の 仲、 つまり 仲秋 8月の15日の夜。

いまの暦だと 年によって いろいろ、 一昨年は 10月の6日だった。

我が家 の お月見 アイテムが、三拍子 揃うことは なかなか ない。

2008.9.15


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