窯だより バックナンバー 2010年 5〜8月


パナソニック電工 汐留ミュージアム” で 開催中の 「ハンス・コパー展」 に行った。

ハンス・コパーについては 昨年12月2日に この窯だより で 書いているので 記憶されておられる人もいるかも。バックナンバー にあります)

20世紀のイギリス陶芸界で活躍した 最も独創的な作家の一人でありながら、

日本では ルーシー・リー との共同制作で知られている程度にすぎない。

今回は そんな コパーの 初期から最晩年に至る 創作の全貌を、日本で 初めて紹介する 大規模な回顧展である。

昨年9月、兵庫陶芸美術館で スタートしてから 心待ちにしていた この展覧会が 、やっと東京に来たのだ。9月5日まで。

そのあとは 岐阜県現代陶芸美術館、年末から岩手県立美術館、来春に静岡市美術館へと回り 終了。

 東京近辺の方は、ぜひ この機会を お見逃しなく。

まだ 見ていない人のためにも、作品の印象は ノーコメント、

初めて行った美術館であったが いい展覧会だった。

・・・あ、その ”汐留ミュージアム” のことで、 ひとつ、

なにせ 館の場所は パナソニック電工ビル4階、 館のオーナーは 日本を代表する 電気屋さん!?

展示照明が 未来的なのである。

ふつう 独立展示台のガラスケースの照明といえば、天井からのダウンライトか スポット。

しかし ここでは、ケース上部のガラス板から いきなり 光が出ている!!

しかも 突起物もなく ペタッとした黒い円があるだけで、コードも見当たらない!?

まだ 実験中 とは なっていたが、 美術館も 変りつつあるんだなぁ・・、 と びっくらこいた。

2010.8.15


暑中お見舞い申し上げます

まっこと アツイです。 あんまり暑いので 湯河原に行ったのであります。

家からだと 近すぎて わざわざ泊まりに行くところでもないんですが、

そのぶん ゆっくりできて、ぬるめの弱食塩泉に ぽっちゃり浸かるのも 楽しそうだなと思ったわけです。

いや〜、正解 正解。 のんびりできました。

なにせ ちょっとローカルな湯河原温泉には 娯楽施設など無いから、

 宿泊客の 旅館外でのすごし方は 散歩。 ぶらぶら 歩くのが 娯楽なのです。

宿から 藤木川に沿って 少し登ると、滝がありました。

不動滝という その滝は 落差15mを轟々と落ちて 飛沫を巻き上げ、汗ばんだ肌を やさしく包みます。

なんでも 夏目漱石の最後の小説「明暗」の舞台にもなり、不動滝を散歩する話がでているそうです。

じつは わたくし「明暗」を 二十歳ころに読んでいるのですが・・・、 忘却・・・。

それはさておき、漱石自身 ほど近い旅館に逗留して執筆したとのことです。

そうかぁ、 湯河原は 文学の湯 だったのでした。

日本最古の歌集 「万葉集」 4500余首のなかで 唯一、温泉が詠われたものといわれる

あしかりの とひのかふちに いづるゆの よにもたよらに ころがいはなくに 」

(足柄の土肥 湯河原の河淵に湧く温泉の 決して絶えそうもないように、

二人の仲が絶えそうには あの子は言わないのだが、私は心配で仕方がない)

と、解釈される ちょっと軟弱な歌ではありますが、そうかぁ・・、日本最古の 「文学の湯」 とは、おそれいったなぁ。

観光会館の 郷土資料展示室に、湯河原に ゆかりが深い 文士作家の紹介パネルなどがあると聞き、行ってみました。

ぐるり と見ていくと・・、 オッ、小林秀雄じゃん、 となりは奥さんかぁ・・・。

えっ? なに? 「ゴッホの手紙」 執筆時の写真? 

ふ〜ん、「ゴッホの手紙」は 加満田旅館で書かれたのかぁ・・・。

今度 泊まりたいな〜。 と、帰り道を変更して 奥湯河原に戻り、加満田旅館へ。

街道から ちょっと引っ込んだ 閑静な森の中に有りました。

でも、僕は きっと 泊まることは 無いでしょう・・・、

予算的に ムリ〜〜〜!!

2010.8.1


梅雨明けも間近のようだが 今年の七夕も やっぱり星空を見ることができなかった。

毎年 勝手な願い事を吊るした笹竹を庭に立てているけれど、

天の川に橋を架けてくれるカササギさんは たったの一夜 梅雨時の7月7日にしか現れないとは どうしたものか。

皮肉にも 翌日8日は雲がちぎれちぎれに浮ぶ星空、

星座早見を手に見上げる空には ちゃんと織姫と牽牛が光ってはいたが

橋のない川の両岸に ぼんやり佇むようで ちょっと淋しそうに見えた。

まぁ、僕にとっても 願い事は流されちまったことだし。 前後賞でもあればいいのに・・・

いや? まてよ!?、七夕は中国伝来の「きこうでん」と 日本の「たなばたつめ」の信仰とが習合したもの、

だったら 今と暦が ちがうじゃ〜ん。 と 急に元気をとりもどし 調べてみると・・・、  やっぱ、そうである。

現在は 陽暦の7月7日と 月遅れの8月7日に行うところが ほとんどだけど、元々は 陰暦の7月7日の行事。

陰暦7月7日は 今年の場合 8月16日なんだってさー!!

よォ〜し、がんばるぞ〜! ・・え? なに? くどい?、  ぼくも そう思いますわ・・。 へへ。

マ、8月16日といったら 盆休み?、 縁側で ビールでも飲みながら 星空を仰ぐことに いたしましょう。

織姫さま と 牽牛さん、 きっと 逢えますように、ね。

2010.7.15


先夜、昼に降っていた雨も 夕刻には止み、 雲の間に おぼろな月が 霞んでいた。

雨月物語か・・  と 思い、 翌日 本屋に出掛けた。

「 春の夜の闇は 妖しくも美しい、光が かすかな朧月は その闇の怪しさを いっそう引き立たせる。」

と、解説にあった。 もう春ではないが 雨のあとの そんな夜にこそ相応しい一冊にちがいない。

「雨月物語」は 江戸時代中期に 上田秋成により記された 読本(よみほん)で、文学的性格にそくしていえば 怪異小説である。

全九話の短編からなり 挿絵も入って、畳に ごろりと横になりながら 頁をめくるのが似合っている。

どの話にも 亡霊、怨霊、妖怪、精霊、なにがしかが登場し、時折 肌に粟を生じながらの読書は、むし暑いこの季節に うってつけ。

毎夜 少しづつ読んで 涼やかなる夜を過そうと密かに思っていたのに、

とにかく面白くて あっという間に読み終えてしまったのが、ちょっと 悔しい。

ところで、 はて・・・? 陶工の話が あるんじゃなかったっけ??

〜ん?? と、パソコンさんに お尋ねしたら、 それは 映画の方。

昭和35年 大映の溝口健二監督作品 「雨月物語」 であった、 脚本は 川口松太郎、

「雨月物語」の中の ”蛇性の淫” と ”浅茅が宿”、それに モーパッサンの”勲章”を合わせた翻案で、

15世紀 戦国時代を舞台にした 陶工が主人公。

ふむ、ふむ、そうであったか・・・。  こんど DVD をレンタルしてこようっと。

2010.7.1.


関東地方も 14日に梅雨入りしました。

しばらくは 乾きの悪い やきもの屋泣かせの日が続くのですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

友人は ”さぁ 梅干し作りだ” と 腕をまくって元気一杯の様子。

そのような 季節を楽しむ心で暮らせば、梅雨の風情を あじわいながらの日々を送れそうです。

こちら 雨の丹沢も 先月 ”全国植樹祭” が終わり、・・・

おッ、そうだ、植樹祭のこと 何もお知らせしてませんでした。

テレビで 新聞で 見ましたよと、あちこちからお便りをいただきながら ついつい・・。

では この場を借りて。 えー、あの日は 雨でした。 そんなの分かってる? 失礼。 で、僕はテレビで見てました、家で。

だってですね、両陛下が来られるとなると すごいんでっせー、やっぱ。

2週間前から村の中をパトカー数台が一日中ぐーるぐる、1週間前からは村の入り口で検問 チェックチェック。

前日には 道という道に プランターの花がズラーリと並び、そして当日はバスが終日運休。

村の住民の自動車は 植樹祭終了まで使用禁止の御布令。

僕の家と窯場の間は 来客が植樹するルートのため 一歩も家から出られません。

で、テレビの実況で見てました。 時々TV を消音、すると ライブで生の音が聞こえている てな変な一日でした。

あいにく天候には恵まれませんでしたが、何はともあれ 無事終了したわけでございます。

我が家にとっての幸は、仕事場への道のアスファルトが敷き直された事くらいかなぁー、

写真の 左が窯への道、右が植樹会場への道。 なんか不思議か景色でしょ?

みなさま 来窯の際は 御間違えの無きよう、

左の道の先の 白っぽいのが 登り窯の屋根でございます、です。 はい。

2010.6.16


三越での日本工芸会陶芸部会展が終了し、最終日の片付けが夜からだったので

早めに家を出て 国立新美術館に寄り 「ルーシー・リー展」 を見てきた。

ルーシー・リーは1995年に93歳でこの世を去ったが、その作品がまとまって日本で紹介されたのは

1989年 草月会館(東京)での 「イッセイ ミヤケ ミーツ ルゥーシー・リィー」展が初めだそうだ。

僕が知ったのは ずっと後2002年、ふだん陶芸作品を見て覚える感覚とは異質な衝撃を受けたのが鮮明だ。

色彩と形態は独創に満ち、過去と未来が交錯する不思議な力を持ってせまってくる。

それでいて かわいい。

あれから 展覧会があるたび 何度か足を運んだが、今回のは いい。

海外から これほど作品を集めたのも すごいことだけど、見せ方がうまい。

ルーシーは ある時期 生活のため オートクチュール用の陶器のボタン制作をしているが

そういう感性が すべての作品の奥に見えるような気がする。

うつわ の 姿態と装飾は、まさに ファッションである。

会場のラスト近くに 10メートルも あろう ガラスケース、そこに並ぶ 花器の列などは

さながらファッションショー、パリコレのフィナーレを歩く モデルたちのようだ。

しかし、そういう現代的な器の 根底にあるのは、じつは何なのだろう・・・

会場で流れる ルーシーのVTRの中に おもしろい言葉があった。

”学生のころ 近代ヨーロッパ芸術を学ぶのがあたりまえの環境にあって、私の心を捉えたのは 先史時代ローマの形”

・・・ルーシーの形、 そして 代表的技法 掻落し装飾の線は・・・

”ある時 小さな博物館で出会った 青銅器時代のやきものに施された模様、それは鳥の骨で引かれた繊細な線だった”

2010.6.2


14日は 日本陶磁協会の 5月研究会に行った。

テーマは 駒場の日本工藝館で開催中の 「朝鮮陶磁 - 柳 宗悦 没後50年記念展」。

研究会は 展示室と、本館の道路向いに建つ 宗悦が暮らした母屋を使って 同館学芸部長がレクチャー。

創設者 柳 宗悦(1889-1961)の審美眼によって蒐集された李朝陶磁 約600点のうち よりすぐった270点を展示するのは、

1937年の開館2年目以来  じつに73年ぶりだそうで、 ”日本民藝館所蔵の韓国陶磁” と して

”柳 宗悦” と ”朝鮮固有の美” を 総合的に考察する内容は たいへん勉強になった。

そして この展覧会は、柳が愛し集めた 李朝の家具や膳の上に器を端座させての陳列もあり、

他の美術館では見ることのできない 自然体の李朝陶磁を楽しめる数少ない機会でもあったのだ。

・ ・ そういえば、 ・ ・  ちょうど 1年前の 京都。

高麗美術館から 宿への帰り道に訪ねた 李朝喫茶「李青」、

李朝家具の上に置かれた 黒釉瓶に 一輪の花、

それを ながめながら いただいた スジョンカ(水晶菓)の味が 懐かしく思い出された。

さわやかな風が吹く、春の陽の まぶしい午後だった ・ ・ 、   京都、行きたいな。

2010.5.15.


ゴールデンウィークは どこも混雑だろうし、本でも ・ ・ ! あれッ? 去年も 同んなじような書き出しだった?

まぁ 毎年 似たような暮らしぶりを しているわけでございます。 はにゃ〜。

今回は このまえ行った 中国で仕入れてきた本なので、読むというより 中日辞典と格闘してる感じですけど。

だって 中国語も同じ漢字だからと思って 目で文字を追って解ったつもりでいたら 大間違いって事態もあるのです。

たとえば 「手紙」、ね、見ただけで スッ と こちらの頭に入ってくるでしょ、 でもね、中国では「手紙」は「トイレットペーパー」のこと、

てな訳で とんでもない内容に ならぬよう ”辞書に首っ引き”に なっちゃうのであります。

今回は 前々から欲しかった本を5冊ばかり 入手してまいりました。

あ、 これ 中国旅行法の ひとつでもありますので みなさんに伝授いたしましょう。

この 5冊は みな 陶磁関係の書物ですが、価格は1冊200〜300元、日本円で平均3500円、5冊だと 17500円となりますね。ハイ。

これね、じつは日本で買いますとですね、中国書は現地価格の 4倍が相場、つまり 7万円ッスよ、ヒョエ〜!とっても 買えましぇ〜ん。

んで、欲しい本が出版されても しばらくガマンしてですね、5・6冊たまったらですよ、 いざ 旅行に出発でーす!

だって ほら 計算してみて、 日本で 7万円、あっちなら 1万数千円。 ね、差額で 旅費が出ちゃうよ〜ん。

”フリー中国4日間”の ツアー料金なんて、もっと安いんだぜ〜。

あーぁ オレって せこいかも ・ ・ !?

2010.5.1.


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                              2010年 1〜4 月


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