窯だより バックナンバー 2007年 5〜8月


きのう、 秋の個展の 打ち合わせで 銀座へ行き、 割と早めに 済んだので、

芸大美術館の ”金刀比羅宮・書院の美 展 ” でも 見るか と、地下鉄に 乗った。

外の暑さ のことなど すっかり 忘れていた。 14:30 上野駅で 下り、地上に出て 後悔した。

JR に すべきだった。 浅草口 から 公園口 への 駅屋上の、自由通路 は 陰ひとつ 無いのだ。

エスカレーターを 2つ使って、 そこへ 上がった 僕が見た 光景 は、

人っ子ひとり いない  まっ白に光る 灼熱の 広い 道。

まわりは すべて 黒い シルエット となって、 陽炎に 揺れている。

左に 見える 丸井 の 電光掲示が、 オレンジ色で 気温 39度を 示す。

通路上は そんな もんじゃ ないだろう 。   とにかく  しかたなく 歩きだしたが、

容赦なく 照りつける 太陽光線 は、 路面を 跳ねまわり 全ての 方向から 僕を 襲った。

ここは もう 日本ではない 。    向こう側に 辿りついて 思った 。

こんな 日は、 ・ ・ あそこ だ 。

予定は ただちに 変更され、   向かったのは 東京国立博物館、 その 東洋館。

古代 オリエント 美術 。  砂漠の 宝 たちは、 案の定、・ ・ ・

いつもより 輝きを 増して 、 僕を 迎えて くれた。

2007.8.23

PS: 第54回 日本伝統工芸展 の お知らせを 予定のページ に UPしました。 


残暑 お見舞い 申し上げます。

暦では 秋 を迎えましたが、 暑さ は 今が 一番。 

無理は 禁物です、 くれぐれも 御自愛ください。

ここ 丹沢は それでも 山、日中は かなり 暑いですが、 

朝夕の サラッ とした 風は、秋の ものと なりつつあります。

見上げる 空の青さ も、少し 深さを 増したようです。

ところで ”空の深さ”で 思い出し、 ちょっと 話が 変わりますが、 以前 こんな ことを聞きました。 

有名な 諺、井蛙(セイア)、 「 井の中の蛙 大海を知らず 」 (井蛙不可以語於海者)、

これには あとに 続く 詞が あり、 それは  「 されど 空の 深さを 知る 」 なのだと。

広さ でなく 深さ、 なるほど 極める とは そういうことかも しれない、

それも ひとつの世界 ひとつの道、 と 思い 感心しました。

でも なにか しっくりせず あとで  調べたところ、

”されど”からの詞は のちに 日本で 付けられたものと 分かりました。

荘子 の 秋水 に 実際にあるのは 「 夏虫は 氷を知らず 」 (夏蟲不可以語於氷者) で、同意反復なのです。

その 良し悪しは 考えるものでも ありませんが、

こんなことを 心に めぐらせながら ぼんやり していると、

しばし、 暑さ も 遠のく のです。

なんにしても  人生 は 、 難解 ですから 。

2007.8.10


 きのう 30日、町田市立博物館・「インドネシア更紗のすべて」 All about Batik 展 を、一般公開 前に 内覧 させて いただいた。

バティック、 それは 蝋で 防染を 繰り返し 複雑な文様を 染める ろうけつ染め。

気の遠くなるような仕事で、一枚の布に描かれるのは、生の営み、とりまく自然 、祈り の形。

300以上の 独特な文化を持つ 民族集団が 生み出す、その 染めの世界は じつに 個性的だ。

内覧会には インドネシア大使 夫妻 をはじめ、両国友好協会会長の 福田康夫 氏、

展覧会 協賛大学学長、町田市長、 そして 民族衣装を まとった たくさんの 現地  国内の方々が 出席。

ジャワ伝統舞踏 も 演じられ、とても盛会だった。 

 そこかしこ から、 スラマット パギー(コンニチハ)、 テリマカシー(アリガトウ)、 が 飛び交い、

ガラス越しの 中庭は、スコール みたいな 大雨が しぶきを あげている。

博物館 は 、さながら ジャカルタ で あった。

20年まえ 訪れた 彼の地を 、なつかしく 思い出しながら 楽しんだ 一日だった。

2007.7.31 


                                  優れた詩人が、

                                          美を歌ったことはない。

                                          それは描くものではなく、

                                          歌ひ得るものでもない。

                                          美とは、

                                          それを観た者の発見である。

                                          創作である。

 

銀座で 用が済み、久しぶりに 歌舞伎座ウラの ”みよし”に行った。

青山二郎が 永く愛し 通った 鴨料理の店だ。

「鎌倉文士骨董奇譚」(講談社文芸文庫)にも、”焼鳥屋みよし”という 1頁ちょっとの小品が 収録されている。

昭和31年 青山55歳の 文章だから、当然 今は文中の”親爺”ではなく 娘さんが 切り盛る。

鴨焼き を注文してから、ビールに のどを うるおしつつ のんびり待つ時間が また いい。

鴨を炙る 備長炭から もうもう と 白煙がたちのぼり、10人で いっぱいの 小さい店のなかは、視界ゼロ。

・ ・ あー、至福のとき まで あとわずかだ。

今、世田谷美術館 で 「青山二郎の眼」 展 が 開催中。

だから お店 混んぢゃってるかな と 心配しながら 行ったら、そういう客 は 無いそうだ。

なるほど ネットのグルメ検索で見ても この店の 鴨の味 と安さ を絶賛するコメントばかり、

青山二郎 に ふれたものは 皆無。  なんとも さびしいやら うれしいやら。

2007.7.11.

検索は「みよし 割烹」で。(Yahooグルメでは 地域を 銀座にしてから)


夏の闇 を 読んだ。

先日、初めて来窯する人に アクセスをホームページで 見てもらったところ、

この ”窯だより” も のぞいてくれた。

 その人は、 3月の ”櫻 と サクラ” の 話に 聞き覚えあり と、

本棚から 17年も前の本 「 千 利休・無言の前衛 」を 手に取った、

すると、その話の 頁 の肩には 折り が 入っていたそうだ。

こう云う のが、 うれしい。

そして ”開高 健 の こと” の ところに ふれ、

その人の ベスト3冊 には 開高 健 の 「夏の闇」が 入る、と。

ふぅーっ。  ・ ・ 読後、 同感。   名著 に 出会えた。

「 入ってきて 人生と叫び  出ていって 死と叫ぶ 」

2007.6.26

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

< Caution ! 重要注意!: 「夏の闇」を これから 読む方に ! >

「新潮文庫」の場合、カバー裏面の作品紹介文は 絶対に見ないこと。本を読み終えるまで 外してしまっておくか、書店カバーで封印してください。

作品全体に深く影響します。僕は図書館のハードカバーで読みましたが、あとで文庫を見てビックリ。 なんで あー云うこと するかなー、 バッカ みたい。


             

TV・CM などで おなじみの 「ガテン」は、料理・モノづくり・建築関係などを中心 とした 仕事情報誌。

今日(6/13)発売、「ガテン」26号 の 巻頭特集 ”ワザが光る「指」と「掌(たなごころ)」の職人たち” に、

僕も 一役 買わせて いただいています。

近ごろは モノづくり を 目指す若い人が 多いそうで、そういった人たちに

修業の 厳しさ 楽しさ、手ワザの魅力を 伝えたい という 編集ライターの意気込みにひかれました。

掌 たなごころ 、 なんとも いい ひびき じゃぁないですか。

でも そう、 テーマが 手 だから 取材での 撮影は、手 が メイン。

カメラに 追われて、”手” が 恥ずかしがったり、照れたりするのを 初めて知りました。

と、いうわけで、 よそ行きで お澄ましさんの 僕の手を、ぜひ コンビニ・書店で チラッと ごらんください。

2007.6.13


3年前、 神保町の 中国書 書店で、1冊の本 と すれちがった。

あの日、三越で 約束が あった僕は、時間調整のため 地下鉄二駅 行った その本屋で、

見なれぬ 窯名が書かれた 背表紙に 手を のばした。

「 雷州窯瓷器 」。 中国南部、雷州半島の 古窯発掘調査報告図録だった。

本を開いて おどろいたのは、器の模様。 鉄絵なのだが ベトナムのものに酷似している。

中国 元時代の青花(染付)との 関係ばかり 論ぜられる、ベトナム鉄絵。

・ ・ ・ これは 雷州窯に、 なにか ありそうだ。

しかし、持ち合せが なかった 僕は、来週も 同じ用で また三越に来るから、と 棚に戻したのだ。

次の週、 本は 無かった。

店主に聞くと たった1冊の 入荷だったそうで、さっそく注文したのは 当然のこと。

待つこと 4ヶ月、中国からの 知らせは ”版元品切”。  しまった!

すぐに 中国系書店すべてに 網を張る。 学芸員に たのんで、中国・台湾の博物館にまでの 大捜査網。

そうして、 3年 ・ ・、  もう 忘れかけていた 先週のこと。 ついに 獲物は 掛かった。

電話口の 書店の人は、中国全土を 探しまくり やっと 1冊 ありました。 と、コーフンしていた。

2007.5.30

教訓 : この手の本は みつけた時、内金を置いてでも 確保しておきましょう。

ところで 本のねだんは わずか5400円、 その 持ち合せがなかった 僕も なかなか すごい。


日本陶芸展の 大阪展にあわせ 15日に上洛、 おととしも そうしたように 宿は もちろん 京都。

大阪へは、途中 パパッ と行って、 作品解説など ササッ と済まし、あとは クルッ と京に戻り 古蹟を 享楽。

鴨川の風を うけながらの 葵祭り。 静かな 伏見深草、石峰寺の 石仏群。

嵐山 竹の古径を 歩いてから、 嵯峨の東南アジア陶磁館。

濁った頭を クリーンアップした 4日間だった。

特に 石峰寺の裏山をうめる 石仏群は、前々から見たかったもの。 

江戸中期の画家、伊藤若冲 の 五百羅漢なのだ。

晩年 この寺に草庵を結んだ 若冲が、10年余を かけて作り 一山に安置したもので、

釈迦の 誕生から 涅槃に至るまでの 一代記を表す、たいへん すばらしいものだった。

そして 一時間以上も居て、 僕 たったひとり。

こんな 静かな 京都が、 まだ あるのだ。

      

さて、話は ガラッて 変わって お知らせを。

湘南発信の ウェブ情報  「湘南スタイル」 で 紹介されてます。

”食文化” と いう カテゴリーの中、湘南の採れたて野菜を使った 料理コーナー ”湘南レシピ(May)に、器 が。

そして 器の作者コーナー ”湘南窯人”(01) に 僕が でてます。

レシピは 採れたて きぬさやえんどう を 使った 料理の数々、 

1週目「ひとくちライスサラダ」、2週目「筍と桜えびのスパゲッティ」、

3週目「釜揚げしらすと4種の豆の和え物」、4週目「ジャガイモとタマネギの あっさりスープ」。

おいしそうだよ〜、 見てちょうだいね〜。

・ ・ と、 京都の感動も どこへやら、 いきなり 食いしん坊の 克童だった!

2007.5.19


        

 きょう 5月2日 発行の雑誌 「サライ」(小学館)は 丸ごと一冊 陶芸特集号。

そのなか、”現代作家24人の「これぞ逸品」” に 、僕も 2ページを使って 紹介されています。(P112、3)

東京国立近代美術館から推薦されての 取材だったので ちょっと緊張気味。

でも とにかく 素敵な 誌面です、ぜひ 書店で ご覧ください。

それに このサライ ”現代作家の逸品プレゼント” の サービスもあるし、

別冊付録 ”作陶入門”は付いてるし、なんと まぁ 太っ腹!

その上 、な な なんと ”人間国宝の「ぐい呑」プレゼント”まで!!

むぅ ・ ・ 、 僕も 応募 しちゃおかなぁ。

2007.5.2


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                                             2007年 1〜4 月

                                                                                 2007年 9〜12月


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